Books 

お気に入りの本に出会った時は
感動を誰かに伝えたくなります

 

「ヤァ!ヤァ!ヤァ!ビートルズがやって来た」 野地秩嘉著 幻冬社

サブタイトルに「伝説の呼び屋・永島達司の生涯」とあります。40年前「ビートルズ日本公演」を実現させたキョードー東京の社長が永島達司その人だったのです。当時観客動員が確実なコンサートと言えば演歌が中心で、興行師と呼ばれるヤクザ紛いの人達が取り仕切っていました。今では数々の外国人アーチストが日本で公演を行っていますが、プロモーターの先駆けとなったのが呼び屋と言われる人達でした。短大生だった私も武道館へ足を運んだ一人です。この本を読む範囲では相当困難だったチケットをどうやって手に入れたのか定かではありませんが、とにかく世の中大騒ぎだったのは確かで、舞台裏を色々知る事ができました。永島さんのお陰で高校生の頃にはベンチャーズ、パット・ブーン、ボビー・ライデルetc…その後も数々のコンサートを観る事ができたのです、ありがとう!(この本はチーズバーガーさんがお里帰りした時拝借しました。)(2007/6/15)
「憑神」 浅田次郎著 新潮文庫

幕末の貧乏御家人別所彦四郎は秀逸な人材にも関わらず出世の糸口を掴めない男だった。ある夜ふと通りかかった祠に神頼みをしてみるとなんとそこから貧乏神が現れたから大変!次々に襲い掛かる不運に立ち向かう健気な姿は抱腹絶倒だが、クライマックスのラストは圧巻です。浅田次郎は大好きな作家の一人ですが、エッセイから歴史劇までその引き出しの多さに感心します。自衛隊員からアパレル関係、危ない関係の仕事までその履歴がレパートリーの広さを作り上げたと思われます。妻夫木聡主演で既に映画化されていて6月に公開されます。(2007/5/22)
「眠れるラプンツェル」 山本文緒著 角川文庫

汐美は結婚6年目の専業主婦だが子供は居ない。夫は超多忙なCMプロデューサー、経済的にも何不自由ない生活はお気楽だけど退屈。そんな怠惰なマンション暮らしに突然飛び込んできた一匹のネコと隣の息子、以来少しずつ生活が狂い始めます。ユルユルの主婦が突然豹変して大胆な行動に出るのでビックリしてしまいますが、テンポのいいストーリー展開に小気味よさを感じます。グリム童話の幽閉の美女「ラプンツェル」のように閉じ込められて可哀想と思いきや…(2007/1/23)
「星々の舟」 村山由佳著 文春文庫

六つの短編が一つの家族で繋がったこの連作小説集で、山村由佳は第129回直木賞を受賞しました。4人の兄妹とその娘、そして彼らの父親は様々な問題を抱えながらも懸命に生きてゆきます。兄妹の禁断の恋、不倫やいじめ、暴力などそれぞれが抱える苦悩は、父の戦争体験で締め括られます。全てが辛くて重い題材で作者渾身の力作であることが伺えますが、瑞々しい透明感よりも重厚な円熟感が増したとでも申しましょうかそんな作品です。何と言っても「禁断の恋」に弱い私です。(2006/9/8)
「世田谷一家殺人事件」 齋藤寅著 草思社

2000年の暮れに世田谷の宮沢さん一家四人が殺害されたこの事件は五年経った今も解決されていない。フリー・ジャーナリストの著者が独自の情報網を酷使してこの事件を捜査するノンフィクションの作品であると同時に、ずさんな警察の初動捜査と、その後の怠慢なお役人体質を批判した告発本でもあります。毎年研修生などの名目で入国してくる様々な国籍の人達の何割かが失踪して不法滞在者となり、ベトナム人だけでも6000人の消息が不明と言います。彼らを待ち受けるグループは決して地上に現れることなく、インターネットを巧み操り暗躍しているのです。頻発する同様の凄惨な事件は従来の捜査方法では太刀打ちできなくなった犯罪なのです。著者は確実にこの事件の犯人を突き止めたのだが…この国は一体どうなってしまうのか?こんな警察に任せておいて大丈夫なのか?どんなミステリー小説よりも怖い現実に背筋がゾッと寒くなりました。(2006/7/17)
「きょうの猫村さん1、2」 ほしよりこ著 マガジンハウス

毎日一コマ更新、ネット上で連載中のアニメが本になりました。主人公の猫村さんは猫だけど家政婦なんです。そんなバカな!いいんです、漫画だから…この家政婦の猫村さんは実に健気によく働くんです。時々ダンボールをバリバリやったり、コタツで寝込んだりしちゃいますが、いいんです、猫だから…うちの猫達はご飯食べて寝るだけ、たまにニャーニャーお話しますが、これも大事な癒しのお仕事。「お前が猫村さんだったらねぇ〜」っていうのが最近の口癖です。ネットの連載は現在も更新中、こちらから登録すれば(無料)ログインできます。(2006/7/2)
「博士の愛した数式」 小川洋子著 新潮社文庫

80分しか記憶が続かない元大学教授の博士と家政婦の私、その息子の物語です。数学、阪神タイガース、家政婦、一見何の関連も無いこれらの事柄が渾然一体となり、まるでコラージュのようにひとつの作品に作り上げられたのは見事です。既に映画化されて上映が間近に迫っているので、博士役に寺尾聡、家政婦役に深津絵里と知ってしまったのがとても残念です。小説を読む時主人公を想像するは楽しみの一つですが、どうしてもイメージが固定されてしまって広がりません。爽やかな感動で涙が止まりませんでした、多分アルツハイマーで入院中の義母の事が重なったのだと思います。(2006/1/13)
「薬指の標本」 小川洋子著 新潮社文庫

標本室で働く私は、ある日標本技術士から靴をプレゼントされ、「毎日この靴をはいてほしい」と言われる。靴はあまりにも足にピッタリで、やがて私は…奇妙で密やかな二人の愛の物語「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の二扁が納められたこの小さな文庫本にすっかり魅了されてしまいました。小川洋子は初体験だったのですが、全作品を読んでみたくなりました。独特のシュールな世界は不思議で、はまり込んだら抜けられない不気味な底なし沼のように果てしなくて、ある意味気持ち悪いのに心地よいのです。「薬指の標本」はフランスで映画化されました。そうこれはフランス映画にピッタリですよ。絶対映画館で観るつもりです。(2005/5/6)

「夜明けまで1マイル」 村山由佳著 集英社文庫

大学生の涯は人妻のマリ子先生と恋愛中、バンド仲間のうさぎとは悩みをうち明け合う幼なじみ。不倫、人妻と聞くと何だかドロドロした恋愛小説を思い浮かべますが、これは爽やかな青春小説です。心の奥の軟らかいところをギュッと掴まれたみたいで、遠い昔に忘れかけていた少女小説に再び出会ってドキドキときめいてしまった感じです。山村由佳は大好きな作家で「天使の卵」「Bad Kids」「青のフェルマータ」etc…あれこれ相当読んできましたが、久しぶりに又出会って、やっぱり落としどころがニクイ!世の中には男と女が居て色々な人間関係が在るわけだけれども、「こんな関係があってもいいかな」とも「このままこの関係が続くんだろうか」とも「このままの関係がずっと続いて欲しい」とも思うのでした。(2005/2)

「ため息の時間」 唯川恵著 新潮社文庫

帯のタイトルに「男は女にいつもしてやられる」とありつい手に取ってしまいました。男の視点で女を描いた9編の恋愛短編集です。浮気する男、二股掛ける男、どこにもある恋愛小説の定番の題材を思いがけない展開でラストに至るテクニックが絶妙です。時にはホラーだったり、ブラックだったり、人情物だったり、様々な味付けで楽しませてくれます。どれも甲乙付けがたい小品の数々ですが、特に好きなのは「分身」です。若くて美しく申分のない妻を、どこかで信用していない男が、ちょっとした思い付きではじめた妻との匿名のメール交換。ほんとうに男ってバカだなぁ〜って思わせる作品ですが、アッと驚くファンタジーな結末がいいですよ。(2004/11)

「肩ごしの恋人」 唯川恵著 集英社文庫

ご存知直木賞受賞作品です。幼なじみの萌とるり子は性格も考え方も正反対だけど親友同士。今時の女の自立の物語は、るり子の3回目の結婚披露宴から始まります。27才という微妙な年令の2人の恋愛、結婚、友情を軽いタッチで描いて行きます。最近「負け犬」とか言う言葉を耳にしますが、女も賞味期限があるのでしょうか?そもそも男が決めた女の価値みたいな物からの自立がテーマです。女の本音をちらっと覗かせながら、強く逞しく生きて行く2人にエールを送りたくなりましたが、一方で「何もそんなに肩肘張らずにもっと楽〜に生きればいいんじゃないの」とも思ってしまいました。(2004/11)

「アフターダーク」 村上春樹著 講談社

深夜12時から翌朝7時までの物語です。わずか7時間で起こる出来事は大した展開もなく、アッといわせるどんでん返しもありませんが、無機質で透明な春樹ワールド炸裂です。深夜にファミレスで出会ったマリと高橋、眠り続けるマリの美しい姉エリ、元女子プロのラブホ従業員カオル、深夜に仕事をしている不気味な白川etc…まるで映画のシナリオのようにト書きと台詞が記述されて行きます。そこには必ずBGMが重要な役割を果たしていて、古いジャズだったりクラシックだったりします。途中高橋がマリに「ある愛の詩」をハッピーエンドのラブストーリーと説明していたので、多分これは美人薄命の話かなと推測しましたが、見事的中しませんでした。モノクロの映像を見ているような不思議な世界が拡がりますが、余韻が残るって言うか「えーっ?!終わっちゃうの?」みたいな…(2004/10)

「寺ねこ」 柳沼吉幸(撮影) 淡海うたひ(俳句) 河出書房新社

寺の境内でのんびりくつろぐ猫の写真集です。例えば谷中霊園、横山大観の墓で白猫が座っていて、「あら、栗太郎そっくり!」と思ったら、「雪女飼いたる猫も雪の色」なんて句が添えられています。上野界隈、浅草、鎌倉など歴史の重みを感じる神社仏閣で、まるで何百年もそこにいるみたいに、どの猫たちも風景にとけ込んでいます。鬼子母神の駄菓子屋、屋根の上で遙か彼方を見つめる猫、お稲荷さんのキツネと一体化してすましている猫、石灯籠からひょっこり顔を覗かせている猫、賽銭箱の横で番をしている猫etc…猫好きにお薦めの癒される一冊ですよ。(2004/9)

「おかめなふたり」 群ようこ著 冬幻社文庫

著者と飼い猫シーちゃんとの愛を描いたエッセイです。偶然出会ってしまった子猫に翻弄されながらも、良い飼い主になろうとあれこれ奔走している群さんに、「そうそう、そうなのよねぇ〜」とか、「それはちょっとやりすぎじゃないの?」とか、同時進行の我が家の子猫と比較しながら楽しく読みました。猫って本当に不思議な生き物です。その魅力は飼った人にしか判らないし、一度取り憑かれたら永遠に奴隷のごとく言うなりになってしまうのです。猫は犬のように人に媚びたり傅いたりしないので、わがままと言われています。シーちゃんもご多分に漏れず女王様です。そんなシーちゃんが愛おしいくてたまらない様子が充分に伝わってきます。あなたも猫と暮らしてみませんか?この本のお陰で命拾いをした猫がたくさん増えるといいなと思っています。(2004/9)

「グロテスク」 桐野夏生著 文芸春秋社

その昔「東電OL殺人事件」というのがあったのをご存知でしょうか。これはその事件を元に著者がフィックションで綴った長編小説です。高学歴のエリートOLがなぜ娼婦をして、殺されなければならなかったか?誰でも興味津々の事件でした。物語は美貌の妹と同級生が同じ犯人に殺されると言う設定で始まります。被害者の手記や裁判の記録、犯人の独白など詳細な資料が事件を白日の下に晒して行きます。妬みやひがみといった女の嫌らしい部分をグロテスクに描き切っているのはお見事としか言いようがありません。途中「これは余計かな?」とか「そんなずはない」と言う箇所もいくつかありましたが、「週間文春」の連載だったと知って納得。終盤に美しい娼婦ユリコの息子で美少年のユリオが登場して、是非続編を書いて欲しいと思ってしまったのです。(2004/8)

「残虐記」 桐野夏生著 新潮社

25年前、少女誘拐監禁事件に遭遇した主人公の作家が告白する体験記と、事件の謎が同時進行で解き明かされ行く。「残虐記」と言うタイトルに恐れをなして読み始めたら、実際残虐なのは監禁事件そのものよりも、救出された後に体験する世間の目の方がより残虐だったというわけだ。新潟の女児監禁事件を思い起こすが、独自の感性で作り上げたフィクションで、その洞察力は鬼気迫るものがある。先日佐世保の小学校でおきた少女殺傷事件に「なぜ?どうして?」とワイドショーに釘付けになる私も又世間の一員というわけだ。先頃行われたエドガー賞授賞式にゴージャスなドレスで出席して話題になった桐野さんの作品にしばらく目が離せません。(2004/6)

「刹那に似て切なくて」 唯川恵著 光文社

娘を死に追いやった男に復讐するため、掃除婦になりすました中年の女がめでたく思いを遂げる。呆然と立ちつくす女の手を引き現場から連れ去った若い女。偶然出会った2人の逃亡劇をロード・ムービーを観る様な感覚で描いて行く。小説を読んでいると映画化する時主演は誰か?とよく思います。私は常にプロデューサーで監督や俳優を選ぶのですが、夫は自分が演じるとしたらどの役か?と思うのだそうです。この作品の若い女は絶対柴咲こうでお願いします。もし私が演じるとしたら中年の掃除婦の役しかないけど…(2004/6)

「穴があったら、落っこちたい!」  中村うさぎ著  角川文庫

あとがきによると「この文庫は私がホストに入れ揚げて角川書店に大借金をした際、交換条件として執筆に約束をしたものである。」だそうだ。ホストに入れ揚げた顛末は「ダメな女と呼んでくれ」で、ブランド依存症の顛末は「だって、買っちゃったんだもん!」で、何でそうなるの?ってこれは愚問。そんなうさぎのこれは結構普通のエッセイ集。色々な人生の初体験のエピソードを綴った前半、後半は当時印象に残った事件を再検分してゆく。特に「パリ人肉事件」や「酒鬼薔薇事件」等を独自の切り口で検分した後半は、なるほどと納得してしまう。考えようによっては不謹慎なと思える所もあったりするが、事件を「痛ましい」とか「悲惨な」とか言う言葉で片づけない所がうさぎ流。(2004/7)

「解夏」 さだまさし著  幻冬舎文庫

「解夏」「秋桜」「水底の村」「サクラサク」の4編から成る短編集です。何の予備知識もなく表題作を読み始めたらこれは私の苦手な病気の話しであることが判明。やがて失明していまう難病に冒された主人公の帰郷の物語で、失明の不安と苦悶は失明した時に救われると言う宗教色の強い作品です。「解夏」は映画化されていますが、信仰心を全く持ち合わせていない私にはちょっと違和感を感じて見ていません。四作はどれも涙もので、文庫本は電車の中で読むと決めている私は、時々ウルウル来ちゃって困りました。フィリピンから農村花嫁になった娘の話「秋桜」も結構きますよ。テレビ番組の企画で小説「精霊流し」を完成させて以来、着々とその道を極めている作者の才能を改めて再認識しました。(2004/3)

「犬の方が嫉妬深い」 内田春菊著  角川文庫

「私の敵は犬の皮を被っていた夫?」って、そう言うことらしい。漫画家、小説家、俳優等多彩な顔を持つ著者は常に注目の的です。巻末に「この本はフィクションです」と在るが多分フィクションなのは個人名くらいで、すべてノンフィクションでしょう。早い話が離婚から結婚に至るまでの顛末記です。三人の幼子を引き連れて家出した主人公、余り聞きたくない話(主に夫の愚痴)の羅列にウンザリしていると、突然「夫の子と信じていた子がDNA鑑定の結果夫以外の遺伝子だった」って、エーッ!?ビックリ仰天ハチャメチャ人生に思わずのけ反ってしまいますが、戸籍の問題、法律の矛盾等多くの問題を投げかけてくれます。読む者を圧倒する著者の凄まじい人生も又才能でしよう。(2004/1)
「楽しみは創り出せるものよ」 ターシャ・テューダー著  メディアファクトリー

アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーはバーモント州の山奥でほとんど自給自足の生活を営んでいます。今年88才になる彼女のスローライフを美しい写真と共に紹介しています。ターシャの憧れる1800年代の農村の人々は生きるためだけに必死で働いてましたが、働くことと楽しむことの両方をバランス良く上手に生きている彼女の一日は牛の乳搾りから始まります。卵を得るために鶏を飼い、はちみつを採るためにミツバチの巣箱を運びます。ターシャは大好きな庭の手入れをし、使い慣れた道具を使い、日常のほとんどの物を手作りしながら、絵を描き続けているのです。夢をあきらめず、無理せず自然体で生活を楽しむターシャの生き方は素晴らしい!(2003/12)




 


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